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なりそこないの唄 


こんばんは。

テスト終わりました! やったね!

新作です。短編です。出来立てほやほやです(でも載せちゃう)

今日(29日)の18時からの文芸会に提出するために書いたもの。

ネタが降りてくるまでずっとパソコンの前に座っていたのですが、全然決まらず……

結局昼を過ぎてから泡を食って書き始めました……


初夏の旅人やらと、同じ系列のお話です。


お楽しみいただけたら、幸いです




BGMに聞いていた曲。
曲名はあんまり関係ないですが、雰囲気はこんな感じのイメージだったり……

※問題等ございましたらご連絡下さい



20120907215857248_201604291510463fa.jpg


『なりそこないの唄』

 彼女と僕は突然旅をすることになった。

 出会ったのは森の中に開けた広場で、僕らの他に影は無かった。鬱蒼と樹々が茂る森の中では、そこだけがぽっかりと穴が開いたようで、秋の夕暮れの柔らかい日差しが差し込んでいた。迷い込んだ広場の中央に、彼女はただ一人佇んでいた。
 いつから此処にいたのだろう、数刻前に降った雨のためか、腰までもある髪はつややかに濡れている。栗色で始まる髪は、毛先に行くにつれて黄金色へ変化する。軽くウェーブした髪は今まで見たどんな髪よりも、美しいと思った。
「誰?」
僕が見ていることに気が付いたのだろう。彼女がこちらに顔を向ける。当然のように色白の小さな顔。淡い青色の大きな瞳に、長い黄金色のまつ毛。くるりとカールした毛先には、水滴が光っていた。
 声をかける言葉を探るうちに、沈黙が訪れてしまう。そのうち、何も言わない僕を不安そうに見つめて、彼女が小さな声で言葉を紡いだ。
「ごめんなさい」
大きな瞳から、大粒の涙が一粒はらりと落ちる。涙は地面に落ちて、花に溶けて消えた。花がくすぐったそうに揺れる。
「泣いていたの?」
「ええ、ごめんなさい」
ごめんなさい。そういって、彼女は僕に頭を下げた。生成りの麻のワンピースに、水滴が落ちる。ぎゅっときつく結んだ小さな拳が、小刻みに震えていた。瞳に涙を浮かべた彼女を、それでも美しいと思ってしまう。
「謝ることはないよ。僕は君に何もされていない」
「あなたは、私に伝えに来たのではないの?」
「何があったのかは知らないけれど、それは僕じゃない」
 僕が言うと、彼女は少し安心したようにほっと息をついた。指先で涙を拭って、しっかりと僕を見つめる。吸い込まれるような瞳に見つめられて、ドキリとする。柔らかそうな、朱色の唇がゆっくりと動いた。
「そう……。私はここで裁きを待っているの」
「裁き?」
「歌えない花守は必要ない。だから……」
私は裁かれるの。呟くように紡がれる言葉は、樹々のざわめきの中に消えて行った。俯く彼女に、影が落ちる。
 「花守? 君が?」
「ええ。なりそこないの、ね」
なるほど、此処は花守たちの森だったのか。それなのに彼女は、唄を歌えないのか。
 花守は唄を歌うことで、花に精気を与える役目を担っている。だから、歌えない花守は、大地の法に裁かれてしまうのだろう。
 こんなにも美しい彼女が?
「……裁きが下ると、どうなるの?」
「きっと、消えてしまうわ。皆がそうであるように」
仕方がないものね。彼女は諦めた顔で、薄く笑みを浮かべた。
 消えてしまう。こんなに美しい彼女が消えてしまうなんて、僕には耐えられない。そう思った時、するりと言葉が抜け出た。
「ねえ、逃げようよ」
「……逃げる?」
「今歌えないならば、これから歌えるようになればいい。そうしたら、此処へまた戻ってくればいい」
彼女が歌えるようになるのかは、わからなかった。自然の摂理は、抗ってはいけないと定められたもの。理解してはいたが、そんなことの一つや二つはもう気にならなかった。
 言葉に力がこもって、気が付くと彼女へ手を差し出していた。パラパラと広場に雨が降り始めた。空に雲は無かった。
 彼女は、差し出された手をすぐに握ることはしなかった。けれど、迷っているようでじっと考え込んでいた。
 雨はだんだんと強くなって、広場の草木は濡れそぼちた。空に雲は無かった。
 僕と彼女だけは、濡れずに立っていた。
「裁きから逃げたら――」
「どうなるの?」
「わからない。逃げた時のことなんて、考えたことも無かったのよ」
「じゃあ、逃げようよ。大丈夫、僕が守ってあげる。ほら」
「だって、歌えない花守は……!」
「歌えるようになればいいだろう? さあ、行くよ!」

 僕は彼女の手を引いて、無我夢中で走った。歌えない花守の逃走を、森の樹々は怒っているようだった。彼らの声は僕にはよく分からなかったが、彼女には伝わっているらしい。美しい顔がくしゃりと歪んで、悲しみに覆いつくされる。それでも、彼女は走るのやめなかった。 
 日が完全に落ちてしまう前に、彼女と一緒に森を抜け出た。辺りは土砂降りで、森の前の小川は、溢れて海になっていた。
 空に雲は無かった。
「どこに行くの?」
海沿いの小道は月明かりで照らされていた。前を歩く僕に、彼女は息を切らせて聞く。花守として育ってきた彼女は、あまり走ったことがないのだろう。麻のワンピースは乱れていて、裸足の足は傷だらけだった。小さな白い足に、痛々しく赤が映える。ごめんなさい、と心の中で謝る。彼女は濡れていなかったのだけが、唯一僕の救いとなった。
 僕も息を切らせて、彼女の問いに答える。
「どこにいこうか。僕らに戻る道はないからね」
「ごめんなさい」
「謝るのは、もう無しだよ。それに、もとより僕は前に進むしかないんだ」
「本当に、ご一緒しても良いの?」
「もちろん。僕が言い出したんだからね」
 彼女はもう裁きの話はせず、僕の手を握ってついてきた。大勢の旅人たちに踏み固められた小道は、森の中の獣道よりはよっぽど歩きやすかった。彼女もそうだったようで、道が大きくなってからは、僕の隣を歩くようになった。
 ぽつぽつと彼女が話をする。僕が相槌を打つと、嬉しそうに笑った。美しい瞳は月明かりに照らされて輝いた。黄金色の髪が潮風に靡く。栗色だったところも、もうずいぶんと黄金色に近づいてきたようだった。雨はしとしと降っていて、星は夜空で輝いていて、僕らは濡れていなかった。
 
 僕らはずっと歩き続けた。花守は雨を嫌うために、深い森の奥にいるのだとかつて聞いたことがあった。それが本当かはわからないけれど、雨が降りしきる中で、花守の使いが追ってくることは無かった。
 東の空が白み始めたころ、遠くにポツンと灯りが見えた。それは僕がよく知っている家で、家の主は、僕がただ一人信頼できる他人だった。
 もう彼女には隠しておくことは出来ないな。隣を歩く彼女を見つめる。美しい横顔は整っていて、今は笑顔に溢れている。僕のためだけの笑顔。
 さあ、話さなくちゃ。
「ねえ」
「なあに?」
僕の問いかけに、彼女は首をかしげてこちらを見る。もう少し明るければ、彼女の顔をもっとよく見ることが出来たのに。そんなことを考えながら、次の言葉を紡ぐ。僕の役目は、終わりに近づいていた。雨はもう霧雨になっていた。もう、これ以上集めることは出来なさそうだ。
「君は、あの家に行くんだ。あの家の主は、君が次にどうするべきなのかを教えてくれるよ」
「あなたは?」
「僕は、此処でお別れしなくちゃならないよ」
「どうして!」
 彼女は、僕の思ったいたよりも別れを悲しんでいるようだった。繋いだ彼女の手に、ぐっと力がこもるのが伝わってくる。そんなことをされると、別れが惜しくなってしまう。
 それでも、言わなくちゃ。雨はもう霧雨だ。
「あのね、僕は『雨』なんだ」
「雨……?」
彼女が不思議そうに聞いてくる。当たり前だ。雨の天候を司る精霊である『雨』が地上にいるのはおかしい。『雨』は雨を降らせて各地を渡り歩くものだから。
「詳しくは『雨』だった。『雨』でありながら、僕は雨を上手く操ることが出来なかった。だから」
だから。彼女は黙って僕が続きを話すのを待っていた。僕らはもう立ち止まっていて、繋いだ手はそのままに向き合っていた。彼女の空色の瞳が、僕に続きを促す。
「だから、僕は、裁きを待つしか無かった」
「そんな」
「なりそこないの『雨』は必要ないからね」
 裁き、という言葉を聞いたとき彼女の顔はさっと青ざめた。それでも、僕は構わず続きを話す。僕にはもう時間がない。
「それで、怖くなって逃げたんだ。ずっとさまよっていたら、森に迷い込んだ」
そして、君を見つけたんだよ。 
 彼女はずっと、僕の顔を見つめていた。きれいな瞳に見つめられて、恥ずかしくなって話すのが早くなる。太陽は徐々に顔を出しはじめた。僕の体の先は、もう霧になっているようだった。もう、時間がない。
「君に一目惚れだよ。可笑しいね、雨が花守に恋をするなんて」
笑っちゃうよね。そういって僕は笑ったけれど、彼女は笑わなかった。そして、ドキドキする僕の気持ちはお構いなしに、彼女はそっとキスをした。
 突然のことに驚いて、僕は声が上ずってしまう。
「花守は雨が嫌いなのは本当だったんだね。君を此処まで連れてくることが出来て、良かったよ。なりこそないの『雨』にも、好きな子を守ることは出来るんだって」
 なりそこないなりに、必死で雨を操った。彼女の為に操った。私情を許さない大地の法を破ってしまったけれど、彼女をここまで連れて来ることできたのだから、悔いはない。
 僕が誇らしげに言うと、彼女は微笑んだ。それから、僕の腰に両腕を回して、胸に顔を埋める。僕はもうドキドキが止まらなくて、なりそこないも悪くないと思う。
 心臓の鼓動が早くなるのを感じる。けれど、僕は最後の役目を果たさなくてはならない。彼女を、逃がさなくては。
「ほら、朝が来る。急がなくちゃ。僕は、このまま此処にいるよ。こんなに沢山雨を降らせてしまった。もうすぐ裁きが下る。君に見せたくは無いな」
言って、彼女の綺麗な髪に触れる。きっと、僕はこのまま消えてしまうのだろう。そうしたら、彼女は此処に独り取り残されてしまう。それは、彼女に申し訳なかった。
 彼女の髪は、もうすっかり黄金色だった。さらさらとなびく黄金色は、朝日を浴びて煌いた。
 僕の胸に顔を埋めていた彼女が、ゆっくりと顔を上げる。そして綺麗な朱色の唇から、一言だけ紡がれた。
「最期まであなたの傍にいるから」

 朝日が霧を照らして反射し、周囲は黄金色に輝いた。
 樹々はうんと伸びをして、花は微笑み、ダンスを踊っていた。
 黄金色の霧の中心にたった独り、花守の少女が座っていた。 

 広い大地に、草木に力を与える美しい『なりそこないの唄』が響き渡った。

初めて意識して書いた、恋のお話です。

何となく恥ずかしかったのですが、せっかく書いたので載せちゃいました(おいおい)


今夏は、長い夏休みを利用して色々向上させたいです。

小説も向上させるぞーー!



それでは、良い夢を
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コメント

ブログを拝見しました

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失礼致しました。

つねさん #- | URL
2016/07/30 14:17 * edit *

こんばんは~。

うわぁ、切ないお話しですね。
花守の彼女の復活と引き替えに『雨』は消えてしまったのでしょうか?
一緒に逃げるという選択肢は無かったのでしょうか?
描写がとても・・・そしていつものように・・・幻想的で、彼女の姿を想像しながら、ハッピーなエンディングを勝手に想像しながら読んでいましたので、ちょっと呆然・・・です。
え~ん、サキはこういうお話しは苦手ですけど、結構好きです(混乱してます)。
あの家、そしてただ一人信頼できる他人ってどういう場所で、どういう人なんだろう?彼女を導いてくれたらいいのに。
「最期まであなたの傍にいるから」
作者の優しい心が伝わってくるようです。

山西 サキ #0t8Ai07g | URL
2016/08/02 20:33 * edit *

執筆、お疲れ様でした。

途中までは「僕」が花守の少女を連れて逃げ切るハッピーエンドか、どこかで少女を失うバッドエンドかと思っていましたが、ちょっと意外な展開で驚きました。
別れのシーンは、少女の気持ちと「僕」のドキドキが伝わってきて、せつなかったです。
少女や情景の描写に透明感があって、読んでいて清々しい気持ちになりました。
最後の歌はきっと、できそこないの歌じゃなかった。せめて、そう願いたいです。

TOM-F #V5TnqLKM | URL
2016/08/03 19:31 * edit *

サキさま

こんばんは。

そうなんですよ、今回は少しハッピーエンドから離してみました。
花守を助けたために、雨は裁きを受け消えてしまいます…。
一緒に逃げるよりも、確実に花守を逃がしたかったのでしょうね。
実は、裏設定でこの世界の全てのものは循環している。っていうのがあるんですよ。
いつか二人は違う形で出会うのかも知れません。

この手の話を書くときは、半分伝わらないのも覚悟で自分の世界満載でいきます。(オイ)
ハッピーエンドを想像して下さっていたのですね、今回はバッドエンド寄りだったのです、すみません…。
でも、好きと言ってくださって嬉しいです。

ただ一人信頼できる家の主が、彼女を導いてくれれば良いですね…

読んでくださってありがとうございます!
コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2016/08/04 17:17 * edit *

TOM-Fさま

こんにちは。

お!意外な展開でしたか!
それは嬉しいです!
今回は、バッドエンド寄りではあるのですが、雨としてはハッピーエンドとバッドエンドが混在している感じかな、と思います。

二人の気持ちをうまく伝えられているか心配だったのですよ!
良かったです。
恋愛系のお話しは初めて書いたので、小っ恥ずかしかったです。
これで恥ずかしいようではまだまだ甘いですかね(笑)

花守の少女の髪の色も、実は「なりそこない」に関係があったりします。
最後の唄が花守本来の唄であれば、雨も浮かばれますねぇ……

読んでくださってありがとうございました!!
コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2016/08/05 18:11 * edit *

ううむ

こんばんは。

とても美しくて哀しい、素敵なお話でした。
そうか、「なりそこない」として逃げなくてはならないのは一人だけではなくて……。
短い間であっても、愛するひとを守り続けた「雨」は、立派ですね。

彼女の歌を耳にすることができてきっと幸せだったんだろうなと思います。

スカイさんらしい、優しくて美しいお話、うん、強い余韻が心に残りました。

八少女 夕 #9yMhI49k | URL
2016/08/07 02:44 * edit *

夕さま

こんばんは。

読んでくださってありがとうございます。
そうなんですよ、実はなりそこないは一人ではなかったのです。

恋のお話、うまく表現出来たか不安ですが、久しぶりに短編を書けて楽しかったです。

雨、頑張りました(笑)
うん、頑張ったで賞を雨に。
彼女の唄を聴きながら、雨は霧に還ったのでしょうね……。

このシリーズのお話は、世界観を理解してもらうことを半分諦めてしまっています……。(おい)
雰囲気でお願いします、って感じに……。
雰囲気を変えずに説明するだけの文章が書けるようになったら、このシリーズももう少し伝わるものになるかもしれません……。

私らしいですか。ありがとうございます^^嬉しいです!
このシリーズのお話は、まだあるので書いていけるといいなぁ……!

コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2016/08/09 00:23 * edit *

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