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初夏の旅人リメイク(?) 

こんばんは。

もう2年ほど前のことになりますが、このブログで「初夏の旅人」という小説をアップしました。

それをサークルの文芸会に出すのに、少しだけ追記しました。


追記にて掲載しますので、もし良ければお暇な時にでも(^^)/




「初夏の旅人」を書いた後、作中のキャラクターから妄想が膨らみ膨らんで、かなり沢山のキャラクターとストーリーが生まれました。

そのお話のほうも、いつか放出していきたいなぁ……


そのうちのキャラクターの一人、盛秋のイラストを今日は載せてみます。

ペンタブでお絵かき。このテイストの絵は、このブログでは余り載せていなかったのですが……

盛秋 (2)





背景とか無い。。。よ。


いつか彼の話も書きたいです。

ではまた、良い夢を
初夏の旅人               



嗚呼、風が吹く

風化する

消えてしまう

嗚呼、私の……



風が変わった。匂いも、色も。
薄紅色の甘い香りを漂わせていた其れまでの風は、この三日間で黄色みを帯びた深 緑の風へと変貌を遂げた。山の上からは色の移り変わりがよくわかる。此処は、森の樹々を見通すにはちょうど良かった。
私と共に日々を過ごした桜の妖精は、次の国へと移動していった。そこで今頃開花を迎えているのだろう。きっと。花を咲かせる時の誇らしげな様子が目に浮かぶ。
少し前まで桃色が覆いつくしていた此処も、今はもう緑だ。こうして、世界が変わっていく。そしてまた、取り残されるのだ。此処だけは、時間が止まっている。

「やあ、久しぶりだね」

声を掛けられて振り向くと、其処に居たのはいつか出会った少年だった。
ウルフカットのグレーの髪の間を、深緑の風がスルスルと通りぬける。若草色の羽織が、それに応じてはたはたと靡く。彼は白い歯をニッと見せて笑うと、私の横へ腰かけた。
私は何年も前から此処に座っている。

「また此処に居たのか」

「ええ、私は此処から動けないもの」

嗚呼そうだった。そう言って彼はすまなそうに下を向いた。色が陰った彼に、樹々がざわわと声をかける。私も、気にしないでと彼の小さな背を軽く叩く。二回、ポンポンと。互いが落ち込んだ時にこうして背を叩くのが、いつからか始まった私たちの決まりだった。
彼が顔を上げたので笑いかけると、彼も微笑み返してくれる。私のほうが彼よりも背が高かった。だから彼が私を見るときは、いつも少し顔を上げる。
彼の背は、ここを通る方々の中でも飛び切り低い。私が彼と初めて話した時から、一回りだって成長していない。けれど、私とは違う。彼の時間は、ゆっくりと流れる。時間が止まった訳ではない。

「サクラはもう行った?」

「何日か前に、此処を旅立ったわ。今頃はもう着いているかも」

「彼女は本当に忙しいな」

「ええ、本当に」

少年は桜の妖精が居なくなってから、此処に到着する。だから、彼は桜に出会った事が無かった。
けれど彼はいつも私に確認をとる。
‘サクラはもう行ったか?’
こうして問いをたてるのが彼らの決まりだった。誰が決めたわけでも無かったが、彼らが存在を初めてからずっと伝統的に守られていた。
私が時を共にする桜の妖精はマイペースで、いつも最後に渡っていた。だから、彼の問いに対する肯定は、彼が此処を通過することを許すという意味に等しかった。

「君に見せてあげたいものが沢山あるんだ。でも、僕は君を解放する方法を知らない」

「良いのよ。貴方の話を聞くだけで、私はかつて見ていた風景を、思い出す事が出来るもの」

「ああ、本当にすまない」

「貴方が謝る事じゃあ無いわ。誰も悪くないもの。それより、いつもの様に話をして欲しいの」

「ああ、そうだね。此処に居れるのも長くはない。さて、今日は何を話そうか……」

彼の瞳は、深い緑。深い緑は、時に青が混ざり、黄が混ざり、それはそれは目まぐるしく色を変えた。小さな躯体に似合わない低くゆったりとした声は、彼に流れた幾年もの時の経過を感じさせる。
彼はいつも、旅の話を聴かせてくれる。出会った妖精の事、眺めた動物達の事、私の知らない世界の話を沢山。楽しい、悲しい、怖い、嬉しい。様々な感情を、彼の話から追体験する。それは私にとって一番幸せな時間だった。
彼と過ごす時は、長い一年の中でほんの僅かだ。彼の役目は、後から来る彼の兄さんの道を創ることだったから、彼は何時だって移動していた。其の移動の合間、時間が止まっている私の所に居る時だけ、滞在時間を少しだけ伸ばして動けない私に旅の話を聴かせてくれる。
生まれ方が違う私を、蔑み除け者にする方は沢山居たけれど、彼は微塵もそんな態度を見せなかった。

「本当は、もう少し此処に居たいのだけど……」

寂しそうに彼が言う。沢山の世界の話を聴かせてもらえた。時間が動いていたあの頃へ、戻った気分になる事が出来た。本当に、楽しかった。
私との別れを惜しんでくれるのは、彼と一握りの妖精達だけ。時間が止まった此処に、長くとどまろうとする方は滅多に居なかった。此処だけを取り残して、周りの風景が次々と変貌を遂げていった。

「今年も貴方の顔を見る事が出来ただけで、私は十分よ。本当に楽しかった。ありがとう」

「今度こそ、君を解放する術を探してくるから」

「私の事はいいの。貴方にはもっと、するべき事があるでしょう?」

こうして彼と話す機会は、後何回在るのだろう。
そんなに、多く無い気がする。

「貴方に会えて、私は幸せよ。貴方の通り道に留まる事が出来て良かった」

「僕もそう思うよ。きっと、君を解放する。其の時まで、待っていておくれよ」

「ええ、ありがとう」

嗚呼、其の時にはもう私は世界に居ないでしょう。そんな気がするの。もう、十分な時が過ぎてしまった。

「さようなら、また来年」

「さようなら。道中気をつけて」

少年は踵を返すと、新緑の風を身に纏い大空へと飛び立った。嗚呼、出来る事ならばついて行きたい。貴方の其の小さな背を、追いかけて行きたい。
此の、祠さえ無ければ……。

人間の信仰によって創り出された私は、彼らがいなければ此処から動くことは出来ない。それなのに、私を創った山の麓の村は、ずっと昔にダムの底へ沈んでしまった。
人々に忘れ去られた時、祠の主は其処に縛られる。主の周りの時間は止まる。
忘れ去られた祠は、風にさらされ風化する。そうして、誰にも気がつかれずに塵になって消える。
此の祠は、もうどのくらい風にさらされただろう。
サラサラと消えて行く風化の速さは、心なしか年々速くなっている。来年私は、彼に出会う事が出来るだろうか。
解らない。
いや、本当は解っているのだろう。きっと……

私は、此の祠から解放されたかったの? 忘れられる前なら、此の運命から逃れることもできたかもしれないのに。自分自身に聴いてみる。
‘そんなことはない’そう返事が返ってきた。
そうね、彼に出会えたもの。時間が止まっていたから、止まることのない彼に出会えたのだもの。
とっても、楽しかったもの。

時間が止まった私に、沢山の方が質問をして通り過ぎる。
次にしなければならない事は、彼のお兄さんの質問に答える事。
彼が一番長く留まる時間の止まった此の地を、旅立った事を伝えねば。

‘初夏はもう行ったか?'


此処は、もうずっと時間が止まっている。
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コメント

わあ~、すっごく色気のあるひとですね!
素敵だ~。
ちょっと着崩した感じがいい!
スカイさん、こういう感じのイラストも描かれるのですね。
またいろんなタイプのモノ、見せてほしいなあ~^^

lime #GCA3nAmE | URL
2016/07/07 07:40 * edit *

limeさま

こんにちは。

ありがとうございます~♪
彼は結構適当な人なので、着崩した感じのが多いです。

こういう感じの絵も結構描くには描くのですが、
最後まで描かないのでブログには載せて無かったんですよ。
といっても、これも中途半端なのですが。。。

もっとクオリティを上げて行って、色々載せられるようにしたいです~!
とりあえず最後まで描かなくちゃ(笑)

コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2016/07/08 14:22 * edit *

あ~

このシリーズの世界観、好きです! そうそう、ちょっと謎めいた「私」のこの静かな語り口がいいのですね。「私」にとって時は止まっているのに、動いている時と重なって、ドラマが生まれている。ドラマというのか、珠玉のシーンというのか。
スカイさんの描き方って、本当に詩的で、全部は見せない、でもぎゅっと凝縮されたイメージが脳内で広がる感じで、こういうの書きたいなぁってうらやましく思うのですよね~。文章から絵が浮かぶというのか。
うちはもう散文のかたまりみたいなもので、詩や歌からはほど遠い(;_;) 
またこれからも楽しませていただきたいと思います(*^_^*)

大海彩洋 #nLQskDKw | URL
2016/07/18 22:40 * edit *

彩洋さま

こんばんは。

お、本当ですか!ありがとうございます。
この話から始まる精霊たちの物語、現在は壮大なものになっているので、そのうち放出していく予定です。
彼女のどことなく諦めた風な雰囲気が、結構気に入っていたり。

私の書き方ですか?
そんな風に言って下さるととても嬉しいです!
しっかりと説明するのが苦手なために、こんな感じになってしまっているのですけどね(笑)

彩洋さんの文章、一つ一つの文が丁寧で、すっと物語の中に溶け込んでいける感じ、好きです。
私は日常の風景とか、表情とかをうまく説明するのが苦手なので、尊敬します。

ありがとうございます。
こちらこそ、彩洋さんのお話楽しませていただきます~~^^
今年は、真シリーズに手を出したいところです!

コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2016/07/20 02:21 * edit *

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