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初夏の旅人 

こんばんは。

4月5日7000HITの時に、ウゾさんに「初夏の旅人」で小説リクエストを頂いていたのですが、

中々書けず、先延ばしになってしまっていました……

最近、色々な小説の案が浮かびまして、流れに乗ってようやく書くことができました!

リクエストありがとうございました!!

stella white12




『初夏の旅人』




嗚呼、風が吹く

風化する

消えてしまう

嗚呼、私の……



風が変わった。匂いも、色も。
薄紅色の甘い香りを漂わせていた其れまでの風は、この三日間で黄色みを帯びた深緑の風へと変貌を遂げた。山の上からはよくわかる。色が変わる其の様が。
私と共に日々を過ごした桜の妖精は、次の国へと移動した。そこで今頃開花を迎えているのだろう。きっと。
世界が変わっていく。そしてまた、取り残されるんだ。此処だけは、時間が止まっている。

「やあ、久しぶりだね」

声を掛けられて振り向くと、其処に居たのはいつか出会った少年だった。
ウルフカットのグレーの髪の間を、深緑の風がスルスルと通りぬける。
白い歯をニッと見せて笑うと、彼は私の横へ腰かけた。
私は何年も前から此処に座っている。

「また此処に居たのか」

「ええ、私は此処から動けないもの」

嗚呼そうだった。そう言って彼はすまなそうに下を向いた。
良いの気にしないで、と彼の小さな背を軽く叩く。二回、ポンポンと。
彼が顔を上げたので笑いかけると、彼も微笑み返してくれた。
彼の背はずっと小さい。私が彼と初めて話した時から、一回りだって成長していない。
けれど、私とは違う。彼の時間は、ゆっくりと流れる。時間が止まった訳ではない。

「サクラはもう行った?」

「何日か前に、此処を旅立ったわ。今頃はもう着いているかも」

「彼女は本当に忙しいな」

「ええ、本当に」

少年は桜の妖精が居なくなってから、此処に到着する。
だから、彼は桜に出会った事が無かった。
けれど彼はいつも私に確認をとる。‘サクラはもう行ったか?'
私が時を共にする桜の妖精はマイペースで、いつも最後に渡っていた。
だから、彼の問いに対する肯定は、彼が此処を通過することを許すという意味に等しかった。

「君に見せてあげたいものが沢山あるんだ。でも、僕は君を解放する方法を知らない」

「良いのよ。貴方の話を聞くだけで、私はかつて見ていたそれらを思い出す事が出来るもの」

「ああ、本当にすまない」

「貴方が謝る事じゃあ無いわ。誰も悪くないもの。それより、いつもの様に話をして欲しいの」

「ああ、そうだね。此処に居れるのも長くはない。さて、今日は何を話そうか……」

彼の瞳は、深い緑。深い緑は、時に青が混ざり、黄が混ざり、それはそれは目まぐるしく色を変えた。
小さな躯体に似合わない低くゆったりとした声は、彼に流れた何年もの時の経過を感じさせる。
彼はいつも、旅の話を聴かせてくれる。出会った妖精の事、眺めた動物達の事、私の知らない世界の話を沢山。
彼と過ごす時は、長い一年の中でほんの僅かだ。彼の役目は、後から来る彼の兄さんの道を創ることだったから、彼は何時だって移動していた。其の移動の合間、時間が止まっている私の所に居る時だけ、滞在時間を少しだけ伸ばして動けない私に旅の話を聴かせてくれる。
生まれ方が違う私を、蔑み除け者にする方は沢山居たけれど、彼は微塵もそんな態度を見せなかった。

「本当は、もう少し此処に居たいのだけど……」

寂しそうに、彼が言う。沢山の、世界の話を聴かせてもらえた。時間が動いていたあの頃へ、戻った気分になる事が出来た。本当に、楽しかった。
私との別れを惜しんでくれるのは、彼と一握りの妖精達だけ。
時間が止まった此処に、とどまろうとする方は滅多に居なかった。

「今年も貴方の顔を見る事が出来ただけで、私は十分よ。本当に楽しかった。ありがとう」

「今度こそ、君を解放する術を探してくるから」

「良いのよ私の事は。貴方にはもっと、すべき事があるでしょう?」

こうして彼と話す機会は、後何回在るのだろう。
そんなに、多く無い気がする。

「貴方に会えて、私は幸せよ。貴方の通り道に留まる事が出来て良かった」

「僕もそう思うよ。きっと、君を解放する。其の時まで、待っていておくれよ」

「ええ、ありがとう」

嗚呼、其の時にはもう私は世界に居ないでしょう。
そんな気がするの。もう、十分な時が過ぎてしまった。

「さようなら、また来年」

「さようなら。道中気をつけて」

少年は踵を返すと、新緑の風を身に纏い大空へと飛び立った。
嗚呼、出来る事ならばついて行きたい。貴方の其の小さな背を、追いかけて行きたい。
此の、祠さえ無ければ……。

人の手で創り出された私は、彼らがいなければ此処から動く事が出来ない。
私を創った山の麓の村は、ずっと昔にダムの底へ沈んでしまった。
人々に忘れ去られた時、祠の主は其処に縛られる。主の周りの時間は止まる。
忘れ去られた祠は、風にさらされる。そうして、誰にも気がつかれずに塵になって消える。
此の祠は、もうどのくらい風にさらされただろう。
サラサラと消えて行く風化の速さは、心なしか年々速くなっている気がする。
来年、私は彼に出会う事が出来るだろうか。
解らない。
いや、本当は解っているのだろう。
きっと……

私は、此の祠から解放されたかったの? 
忘れられる前なら、此の運命から逃れることもできたのに。
自分に聴いてみる。
‘そんなことはない’そう返事が返ってきた。
そうね、彼に出会えたもの。
時間が止まっていたから、彼に出会えたのだもの。
とっても、楽しかったもの。

時間が止まった此処は、沢山の方が質問に来る。
次にしなければならない事は、彼のお兄さんの質問に答える事。
彼が一番長く留まる、時間の止まった此の地を旅立った事を伝えねば。

‘初夏はもう行ったか?'

此処は、もうずっと時間が止まっている。



2013/12/03 Sky
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カテゴリ: 短編いろいろ

テーマ: 短編小説 - ジャンル: 小説・文学

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コメント

 こんばんは。
おおっーー もうすっかり 忘れ去られたかなと思っていました。
覚えてくれていたのですね 嬉しいです。

初夏らしい 爽やかな掌編ですね。
其処へ 少しの哀しさと寂しさと 無常さと…
丁度いいバランスで ファンタジーとリアルさがあり いいですね。
読後感が爽やかで 涼やかな掌編でした。 

ウゾ #- | URL
2013/12/04 18:02 * edit *

ウゾさま

こんばんは。

いやいや!忘れてませんよ!
遅くなって申し訳御座いませんでした!

いつも頭には置いていたのですが、なかなか上手く纏まらなくて、12月になってしまいました……

初冬なのに……初夏……(笑)
爽やかですか?
ありがとうございます。

哀しさ、寂しさ、無情さ、

そんなどうしようもないような行き場を失ったような感情を、書くのが最近好きです。
読後感爽やかで良かったです♪
少し気にしていたもので……


コメント、リクエストありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2013/12/04 22:56 * edit *

本当だ

初夏のお話だったんですね!
私の菊よりも上手がいる……などと安どしている場合じゃありませんでした^^;
このお話し、とても切ない気持ちになりました。
初夏の爽やかさが描かれているから、対比になって、尚更そう思うのかもしれませんが、哀愁が漂っているというのか。
この祠の女性は何の具象なんだろう。時が流れていっているのに、止まっている時間の中にいる……今年、青森の賽の河原と言われている子どものためのお寺で見た祠、その中に服を着せてもらって寒そうに立っているお地蔵様と風車を思い出してしまいました。
誰かの気持ちが閉じ込められた祠なのかなぁ。
少し余韻に浸らせいていただいています。
そうかぁ、スカイさん、高校2年生なんですね。私が高校生の時はこんな素敵な物語を書くことは絶対になかったなぁ。すごいなぁと思いました。

大海彩洋 #nLQskDKw | URL
2013/12/10 18:57 * edit *

彩洋さま

こんばんは。

ははっ、そうなんですよ!(笑)
遡るよりも未来を見た方が早いくらいの……(笑)

この話は、いつか書きたいと思っていた話なんですよ。
勝手に創りだされて、都合よく捨てられる。

なるほど初夏の爽やかさと対比になっているのか、というのは言われて気が付きました(笑)

歩いていると見かける、忘れられた稲荷神社や、落ち葉をかぶったお地蔵様。
創られた時は沢山の人に祭られていたはずなのに、いつの間にか人々の記憶から消え、祀っていた人々が土へ還り、とうとう誰も知らない場所になる。
栄えていた時を知っているから、なおさら悲しく辛くなる。

あっ、一発芸人……なんて思ってしまったのは内緒です(笑)

ありがとうございます。
そう言っていただけると、嬉しいです……!

ということは、彩洋さんも高校生の頃から何か書いていらっしゃったのですか!?
読んでみたいなあ……なんて(笑)

コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2013/12/11 21:16 * edit *

こんばんは。

うわあ!素敵なお話しですが、とっても切ないです。
私は誰?
少年は何者?
美しい描写に風景を想像しながら、ずっとこの2つを疑問に思いながら最後まで一気でした。
冒頭の匂いと色の描写とても素敵ですよ。
少年や私の発する台詞もとても澄んでいて洗練されています。
そして疑問を解消してからのラスト……
最高に美しいのにとっても切ないです。
でもいい読後感です。
適度な重みが心に残りました。
素敵な作品、ありがとうございました。

やっとStella作品の読書を再開しました。
感想をお届けします。
スカイさんには今年もお世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。
でも今年中にもう1作くらい読めるかなぁ……。

山西 サキ #0t8Ai07g | URL
2013/12/29 21:13 * edit *

サキさま

こんばんは。

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

ありがとうございます♪
この話は、ずっと昔から書きたかった話で、今回書くことが出来て満足しています。

色と匂い、初夏を思い出しながら(だってもうずっと前の事だし笑)考えて考えて書きました。
季節の変わり目って結構突然で、匂いが変わったな、とか感じたりします。

今回は一日で、数時間で一気に書き上げたのですが、あっさりと(あまりセリフに悩むことなく)書くことができました。

そう言っていただけると嬉しいです♪

これからもよろしくお願い致します!

コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2014/01/03 01:24 * edit *

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