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『AGAIN』 

こんばんは。

さて、今日は月刊Stella11月号の締切日です。

ロム専になりつつあるスカイも、今回は参加します。滑り込みます。締め切りに。珍しく小説で(笑)

星恋詩以外の小説を、ブログに載せるのは初めてですが……(ううっ緊張!)

高校の企画に参加するのに書いた短編小説です。(出来立てほやほや♪)


通りにクリスマスツリーが増える中、物騒な小説行きマーーース

お楽しみいただけると幸い……



stella white12

AGAIN7.jpg




 その女性は唐突に彼の前に現れて、開口一番こう言った。
「私を殺してくれ」と。
 それからつうっと涙を流し、彼の足元にうずくまってしまった。
早朝人気の無い森を独り歩いていた彼は、反射的に構えた銃を慌てておろして謝るはめになった。彼女の名前は○○○と言った。(これは後で彼女が彼に話していた。)
 子供の様にうずくまる○○○をどうしたら良いものか、とおろおろと見つめる。彼は、彼女と彼を出会わせた神を恨んだことだろう。
無言でうずくまる彼女をじっと見ると、背が小刻みに震えているのがわかる。彼は大きくため息をついて、○○○の背中に呼びかけた。
「……何故そんな事を、私に頼むのです?」
 そう彼が訪ねると、○○○は何事もなかったように顔を上げて、
「ごめん、冗談」
 一歩退いた彼に、それだけ呟いた。
それから彼女は立ち上がり、頬にかかった長いブロンドの髪を耳にかける。彼女は男の彼が少し見上げてしまうほどの長身で、大層スレンダーな身体をしていた。明るい茶色の瞳には、涙の後は見つけられない。
「貴方、本当に私を殺す気だったでしょ?」
見上げる彼に悪戯に微笑み彼女は言った。
「……何故そう思います?」
「だって貴方、私に銃を向けていたじゃない」
 当たりでしょう? と小さく首をかしげる。
彼は一度彼女に見惚れたように動きを止め、すぐに険しい顔になった。
「それだけの事で? こんな森の中です。物音がすれば銃だって構えますよ。熊でも居るのかと思ったのです。気に触ったようでしたら、すみません」
捲し立てるように一気に彼が言うと、○○○はニヤリと笑った。
「あんな小さな銃で熊を倒すつもりだったの?」
笑いを含む彼女の言葉に、彼は一度目を丸くした。それからすぐに、嫌な顔をする。
「ああ……。その通りですね。貴女は正しい。確かに私は銃を構えましたよ。それは熊を殺すためなんかじゃない。けれど、だからと言って貴女を殺そうと思ったわけではありませんし、増して貴女の『殺せ』という頼みに応じるつもりは微塵もありませんよ」
はあ、とため息をつきながら彼が見つめると、彼女は涼しい顔で見つめ返した。
「何、怒っているの?」
目を逸らした彼の顔を、わざとらしく腰をかがめて覗き込む。
「怒っていません」
露骨に嫌な顔をする彼を、面白いものでも見るかのように彼女は見つめた。
「貴方、モテないでしょ?」
「余計なお世話です」
ニヤリと笑う○○○を横目でにらんで、彼はゆっくり立ち上がり、うんざりした顔で口を開く。
「そもそも何故見ず知らずの私に、あんな事を頼んだのです?」
彼が僅かに口調を荒げると、○○○は急に真面目な顔になった。一息ついて立ち上がって、近くにあった木にもたれる。
「私ね、死に損ねちゃったの」
「は?」
抑揚をつけずに話された彼女の言葉に彼は眉をひそめる。
「死に損ねちゃったのよ。独りで村を出て、暮らしていたの。成人してからずっと。けれどやっぱり村が恋しくて。仕事を切り上げて村で暮らそうと思って戻って来たのよ。
それが皆……殺されていたの」
もう嫌になっちゃった、と呟き○○○は下を向く。表情は解らない。
「ええと……いつ?」
俯く彼女に彼はそっと声をかける。
「一月前」
すぐに返事が返された。
そしてそれだけ言うと彼女は、俯いたまま木の幹に身体を擦り地面に倒れ込んだ。
彼が驚いて、○○○に駆け寄る。彼の位置からは彼女の顔は隠れて見えなかったが、小さく鼻をすする音が聞こえ、一先ず胸をなでおろした。
周囲を確認して、彼女の隣に腰を下ろす。
「ごめん、見ず知らずの貴方にこんな姿を見せてしまって」
「今更何を言っているのです? もういいですよ。好きなだけ泣いて下さい。私が周りを見ていますから」
膝まであるロングブーツの紐を弄りながら彼がそう言うと、彼女は小さく「ありがとう」と言い、それからしばらくうずくまって動かなくなった。時折○○○の背が小刻みに震えるのがわかる。
彼がまた、立ちあがって周囲を見渡す。
特に何も無い。
動くものは何もない、鬱蒼とした静かな森である。小動物は何匹か遠目に見た。大動物は幸いまだ出会ってはいない。だから彼は無傷でここにいる。
熊がこの森に居るかどうかは解らない。けれど、足跡、糞それから抉られた木。
証拠がまるで、一つもない。
だからきっとこの森には居ないのだろう、と彼はとっくに結論を出していた。
それこそ、彼女と出会うずっと前に。
彼がもう一度、黒い目を細めて周囲を見渡す。まるで時が止まっているように、音はなく動くものはない。
背の高い木の隙間から見える小さな空を見上げ、一つ大きくため息をついた。
長い、長いため息。
どうしてこうなってしまったのか――。と、そう語る様な。
木々の間の小さな空を、鳥が一羽横切った。
木が揺れて葉が一枚落ちてくる。それは彼の足元に落ちた。そしてまた、無音になった。
数歩離れた地面へ目を落とすと、○○○はまだうずくまっていた。泣いているのか、寝てしまったのか彼の位置からは解らないだろう。ゆっくりと目をつぶり、もう一度開かれた彼の瞳は儚く揺れていた。
彼はまた小さくないため息をついて、樹の幹にもたれる。
黒いジャケットの胸元を緩め、銀のロケットペンダントを取り出し、開く。中の写真は四人の家族で、右側に立っているのが彼だった。隣に立つ女性を見て微笑んでいる。手は座っている息子の肩に置かれていた。
写真の下に小さく、家族の名が刻まれている。しばらく見つめた彼は、ロケットを閉じ両手で握りしめて、大切そうに服の中にしまった。
大きくため息を吐き、腰に吊るした銃をおもむろに手に取る。手を伸ばして真っすぐ構えられた銃は、どこを狙うでもなくすぐに下ろされた。
間髪いれずに彼の耳が幽かな音を拾い、下ろした銃を持つ手に力がこもる。
それは○○○が立ちあがった音で、彼女は両手で髪をかきあげ、うーんと伸びをしていた。
「見ていてくれたの? ありがとう」
「そりゃあ、約束ですから」
土を払って立ち上がる。やはり彼がほんの少し見上げる形になった。とても整っている顔だ。睫毛が凄く長い。彼女はよく見ると非常にラフな格好で、腰には銃を吊っていた。動きには隙がない。まるで豹の様な――
「惚れちゃった?」
ニヤリと笑って○○○は言う。
「まさか。ご冗談を」
彼が淡々と返事をすると、つまらないの、と呟いた。それより、と彼が言う。
「もう良いのですか?」
「……うん。ありがとう」
寂しげに微笑んだ彼女の瞳には、やはり涙の跡は見られない。
「ごめんね。立ち止まらせてしまって。何処かへ行く途中だったのでしょ?」
「……いえ。特にあては無いので。大丈夫ですよ」
ごめんね、ともう一度呟いた彼女に、彼は一瞬寂しげな顔をして小さく微笑んだ。
「貴女は、これから何処へ?」
「私も、決まっていないなあ……。もう街に戻る気もしないし村へも戻れない」
彼女もつられて小さく微笑む。薄い茶色の瞳は少し陰っていた。
「では、お互いあての無い旅ですね」
「ははっ、そうね。良い旅路を」
「そちらこそ、良い旅路を」
 村と反対方向へ進む○○○の背中を静かに見送って、先へ進もうと振り返る。
彼がふと視線を落とすと、彼女が居た場所には丸まった紙切れが数枚落ちていた。一枚を拾い上げて開く。それは、人を喰うと伝えられてきた種族の村『※※※※※』の絶滅を知らせる一月前の記事だった。下に村が滅ぶまでの間犠牲になった人々への追悼の文と、彼らの名前が箇条書きで添えてある。
そこには、先のペンダントの家族の名も載っていた。彼はしばらくその名を見つめ、やがてゆっくり記事を閉じた。腰を屈めてもう一枚を拾う。それは、※※※※※の村人達を殺して消息を絶った一人の男の写真だった。
写真の中の男は、紛れも無く彼だ――。
彼は暫く紙を見つめ、まとめて丁寧に折りたたんでズボンの後ろポケットに入れた。
それから、上着の胸ポケットを探り煙草の箱を取り出す。箱を開け一本取り出して口元まで持っていったが、つと遠くを見つめ、吸わずに箱にしまい胸ポケットに戻した。
「さて」と独り呟き、ゆっくりと足を踏み出す。

静かな森に、銃声が轟いた。
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カテゴリ: AGAIN(小説)

テーマ: 短編小説 - ジャンル: 小説・文学

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コメント

だんだん終盤へ差し掛かっていくにつれて背筋がゾッとしました…!
スカイさんは星恋詩みたいに幻想的な雰囲気の綺麗なお話を書かれるイメージが強いので(勝手なイメージですいません)、なんだか意外でした。でもこういうお話も好きです!

”彼女”の、悲しんだ後にさっと立ち直って颯爽と去っていく感じが個人的に好きですね。”彼”の方も優しい素振りを見せていながら、実は……怖い。

最後の銃声に、色々と想像してしまいました

玖絽 #- | URL
2013/11/13 22:30 * edit *

こんばんは~。

スカイさんはこういうお話しも書かれるんですね。
ちょっと新鮮でした。
でも不気味で、とても面白かったですよ。
彼女の気持ちはちょっと理解不能ですが、死にたかったのでしょうか?
彼は何故村を滅ぼしたのでしょう?
「さて」これは誰に向けられた言葉?
中途半端な気持ちのまま最後に響く銃声。
謎は深まるばかりです。

山西 サキ #0t8Ai07g | URL
2013/11/17 18:25 * edit *

玖絽さま

こんばんは。

御返事遅くなりました!

おっ、狙い通り、とニヤリとしたスカイです。
このブログでは、この小説以外に星恋詩しか載せていないですしね。
実は、載せていないものはこういう類の話が結構あったりします。(未完ばかりなのですが笑)

おお、彼女中々つかみどころが無くて(笑)

読んだ方によって考える結末がかわるような、想像させる小説をかきたいと思っての、これ。
想像していただけたなら、本望です!

コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2013/11/17 20:51 * edit *

サキさま

こんばんは。

ええ(笑)
実は載せていない小説はこういう話の方が、多かったり。

面白かったですか!?
良かったです!
彼女本当、つかみどころが無いですね(笑)

ああぁ……!!
ここは最後まで表現できなくて。。。
結局、伝えきれていない、という。

「彼が何故村を滅ぼしたのか」
最初の方で、彼が持っていたロケット
中には彼の家族の写真。写真の下に刻まれた家族の名。

最後の「村が滅ぶまでの間犠牲になった人々」
これは、村人によって殺された一般の人々です。
そこに、先ほどの家族の名が載っている……

これで解りますかね……?
文章力不足です…………


後の展開を読み手に想像させる小説をかきたいなあ、と書いたこの話。
想像していただけると、嬉しいです。

コメントありがとうございました!!

スカイ #- | URL
2013/11/17 21:05 * edit *

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